会いたいキモチ
『ずっと、貴方に会いたかったのよ』
僕が顔を上げると、肌の白い女性が立っていた。
『・・・はい?』
彼女は上品な笑顔を浮かべた。
『多分、貴方はまだ私の事を知らないでしょう?だけど、私はもうずっと前から貴方の事を知っているのよ。いい?これだけは覚えといて。私は今、貴方に会った。その事実が大事なの・・・』
そう言うと彼女は僕の向い側の窓をこじ開けてこちらを振り向いてまた笑ったかと想うと、すぐさま細長い体を滑り込ませ、猛スピードで走る電車の窓から飛び降りた。
『うわぁッ!』
あまりに唐突な出来事に思わず声を上げると、それは夢だった。
突然素っ頓狂な声を上げて目を覚ました僕の事を見て周りの乗客たちはクスクス笑っていた。
急に恥ずかしくなって僕は思わず顔を伏せた。
すると、僕の隣の席に座っていた彼女は耳元で囁いた。
『忘れないで・・・』
大丈夫。まだ覚えているよ。
忘れるものか。