ストレス社会
『気軽に何かを言おう!!!』
僕の隣に座っていたオジサンは唐突にそう叫けぶと急に立ち上がった。
僕はびっくりした。 あたりまえだ。
電車内で叫ぶ人なんてそうそういない。
それに、その叫んだ言葉の意味もよくわからない。
気軽に何かを言おう?
一体、何を言うんだと言うんだ?
そう思ったのは、僕だけじゃないはずだ。
そこに居合わせた乗客全員が、その言葉の真意を考え、そして同時にそのオジサンの次の言動、もしくは行動を待った。
そのアクション次第では、ここから(別の車両に)逃げる必要も出てくるかもしれない。
『気軽に何かを言おう!!』
僕はビクッとした。
オジサンは、またそれを繰り返した。
僕はそのオジサンが怖くなってきた。
この人から離れよう。
僕がそう思った時、前の席に座っていた太ったオバサンも立ち上がったかと想うと、オジサンに向かって叫んだ。
おそらく、みんなの気持ちを代弁して。
『気軽に何を言うって言うのよ!!?』
『気軽に・・・、気軽に・・・、
どっかーーーんッ!!』
大音量でそう叫んだオジサンは、次の瞬間、僕の隣で爆発した。
ただの爆発じゃなかった、それはそれは大爆発だった。
きっとオジサンはストレスをため込むタイプだったのだろう。