一瞬の痛み

 


『ぬあぁあああああああああああああ!!!』


激痛に襲われて悲鳴を上げていた僕は担架に乗せられたまま、勢いよく手術室に運び込まれた。

急性の盲腸だった。

痛い。痛すぎる。

『はーい。じゃあ、麻酔かけますよぉ』

看護師さんはそう言うと、僕に向かっていきなりワインをかけた。


『!?』

『大丈夫。手順は間違ってないから心配しないでぇ』

看護師さんは続けて、僕に砂糖と塩を振りかけた。
腹の痛さと、あまりに不可解な展開に僕はうろたえた。

『先生、入られますぅ!』

看護師に先生と呼ばれた男は、大きな枝切りバサミを抱えてきた。
僕は思わず痛みを忘れて引き攣った。

『はーい、じゃあお腹切りますね!』

僕が拒絶する間もなく、先生は僕の腹を枝切りバサミで、ばっさばっさ切り裂いっていった。


アッと言う間だった。
気づいたら僕はベッドの上に寝ていた。
天井を眺めながら僕は思った。

・・・麻酔、いつ打たれたんだろ?

いつの間にか手術は終わってしまっていた。


『まるで人生みたいでしょ?』

看護師さんは僕の包帯を取り変えながらそう言って笑った。