終わりの始まり
「こんにちわ」
ぺータは鏡の中にいた自分そっくりの人に話しかけた。
「こんにちわ」
一秒も経たずに、鏡の中の彼は答えた。
声までぺータそっくりだった。
ぺータは話相手ができたのが嬉しくて嬉しくて、毎日彼に話し続けた。
そんなある日、うんざりしたペーターはついに怒った。
「おい君!僕の真似ばかりしていたら会話にならないじゃないか?たまには、自分から何か話せよ!」
「・・・」
鏡の中の彼は相変わらず、一秒も経たずうちにぺータの真似をすると、あとは黙ったままだった。
「おい!!」
ぺータはそう怒鳴ると、つい手が出てしまった。
その瞬間だった。
鏡の中の人もこちらを殴ってきた。
お互いの拳はちょうど鏡を挟んで相撃ちとなった。
喧嘩慣れしていないぺータの拳に痛みが走る。
鏡の中の人はなかなかのパンチ力だ。
「この野郎!!」
怒ったぺータは鏡の中の人に向かって、もう一度拳を放った。
だが、今度はその人は真似して殴ってこなかった。
その代り、鏡の中から手を伸ばすと、ぺータの拳をギュッと掴かんだ。
『交代だ・・』
そういうとその人は、ぺータを物凄い力で鏡の中へと引きずりこんだ。
ぺータが抵抗する間すらなかった。
気がつくとぺータは鏡の中に、その人は鏡の外にいた。
彼は鏡の中のぺータを見るとニヤっと笑い、鏡の前から離れていった。
そうして、ぺータの終りが始まった。