2014-08-18 老人と季節 散文 老人が歩いている。 『歩いている?彼はちっともそこから動いちゃいないじゃないか?』 誰かはそう言った。彼はこの道を歩いてきたのか? それともただ景色が移り変わっていっただけなのか? 身動き一つ取らずに、彼を取り巻く環境だけがどんどん流れて行った。 移り変わっていった。 長い年月の間、老人にできた事と言えばただ一つ。 ただ『見ている』ということ。 決して動かなかったとしても。 やがて向こうから季節がやって来る。